心肺蘇生法の歴史と心肺蘇生ガイドライン2020徹底解説





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一般的な心肺蘇生の根幹をなす重要なガイドラインであるAHA(アメリカ心臓協会)の心肺蘇生法ガイドラインが新しくなり、10月21日に全世界に公開されました。


Hghlghts_2020ECCGuidelines_LR (heart.org)



今回の改定では手技の面では大きな変更はありませんでしたが、これまでは特殊なケースとされていた妊婦さんへの心肺蘇生や溺水者に対する心肺蘇生が記載されるようになりました。


特に溺水に関しては通常の流れとは異なる流れになっていますので、一般市民であっても学校の先生やプールの監視員などはきちんと習得しておく必要があります。




これから各地で、新たなガイドラインをもとにした講習会などが開かれていくことになりますので、今回は新・心肺蘇生ガイドラインである心肺蘇生ガイドライン2020を心肺蘇生法の歴史とともにご紹介していきます。





心肺蘇生ガイドラインとは


消防署の救命講習や日本赤十字社の救急法などの受講経験がある方も多いと思いますが、1960年にその大元になる心肺蘇生法ガイドラインの原型ができ、今回の心肺蘇生ガイドライン2020がちょうど60年目の節目の年になります。



日本の蘇生ガイドラインである、JRC蘇生ガイドラインは2000年から始まり、ガイドライン2005、ガイドライン2010、そして現在広く周知されているものがガイドライン2015です。


世界各国から有識者が医学的根拠と最先端の知識に従って話し合い、最新の救命方法をアップデートしたものが心肺蘇生ガイドラインです。



ガイドラインが浸透する期間を考えて、現状5年に1度更新しており、今回蘇生ガイドライン2020が発表されました。


心肺蘇生法は何が変わってきたのでしょうか?心肺蘇生法の歴史を振り返ってみましょう。




心肺蘇生法は何が変わってきたのか?



心肺蘇生法の流れで最も大きな変化を見せたのが、ガイドライン2000からガイドライン2005に変わった時です。

ざっと挙げるだけでも


人工呼吸の吹込みにかける秒数が2秒(ガイドライン2000)→1秒(ガイドライン2005省略可)

自発呼吸、咳、体を動かすといった循環のサインを確認(ガイドライン2000)→循環サインの確認をしなくなった(ガイドライン2005)

心臓マッサージ15回+人工呼吸2回(ガイドライン2000)→心臓マッサージ30回+人工呼吸2回(ガイドライン2005)

心臓マッサージの位置が胸骨下端から 2 横指上(ガイドライン2000)→乳頭と乳頭を結ぶ線の胸骨上(ガイドライン2005)

2004年から一般市民のAED使用が認められる

とかなり大幅な変更が見られました。

ここまでの大幅な変化はないものの、その時代の最新の救命方法えおとり、時代にあわせて心肺蘇生法の流れは変わってきていますので1986年から2015年までの心肺蘇生の流れを見てみましょう。


“心肺蘇生ガイドラインと心肺蘇生法の流れの変化”


ガイドライン       
流れ
ガイドライン1986

意識の確認→助けを呼ぶ→ 気道確保→2回人工呼吸→脈の確認→救急車要請→心臓マッサージ15回+人工呼吸2回

ガイドライン1992

意識の確認→助けを呼ぶ→気道を確保 ( 消防講習会では気道確保の前に“口腔内確認”を行う )→呼吸の確認→呼吸なし→人工呼吸:1.5~2秒かけて800~1200ml→ 脈の確認→脈なし→CPR:1分間に80~100回のリズムで15回+人工呼吸2回

ガイドライン2000

意識の確認→助けを呼ぶ気道を確保呼吸の確認→呼吸なし→人工呼吸:2秒かけて10ml/kg(500~800ml)→循環サインの確認→循環サインなし→CPR:1分間に100回のリズムで15回+人工呼吸2回

ガイドライン2005

意識の確認助けを呼ぶ気道を確保呼吸の確認(見て・聞いて・感じて)→呼吸なし→人工呼吸:1秒かけて胸が上がるのが見てわかる量→CPR:1分間に少なくても100回のリズムで少なくても5センチ沈む程度の強さで30回+人工呼吸2回 AED

ガイドライン2010

反応の確認→助けを呼ぶ→呼吸の確認(腹から胸にかけて見る)→呼吸なし→CPR:1分間100回以上のリズムで少なくても5センチ下沈む力で30回+人工呼吸2回 ※人工呼吸ができないかためらわれる場合は心臓マッサージのみ AED

ガイドライン2015

反応の確認→助けを呼ぶ→呼吸の確認(腹から胸にかけて見る)→呼吸なし→CPR:1分間100回~120回のリズムで5センチ以上6センチ以下沈む力で30回+人工呼吸2回 ※人工呼吸ができないかためらわれる場合は心臓マッサージのみ AED

コロナ渦における心肺蘇生

自分の口鼻をマスクかガーゼで覆う反応の確認(顔を近づけず)→助けを呼ぶ→呼吸の確認(顔は近づけず)→呼吸なし→傷病者の口と鼻をマスクかガーゼで覆う→CPR:1分間100回~120回のリズムで5センチ以上6センチ以下沈む力で胸骨圧迫を行う ※人工呼吸は実施せずに胸骨圧迫だけを続ける AED







心肺蘇生ガイドライン2020



心肺蘇生ガイドライン2020での手順や内容については大きな変更はありません。


基本的にはガイドライン2015講習のままで概ね対応できますが、冒頭で述べたとおり、これまでは特殊なケースとされていた妊婦さんへの心肺蘇生や溺水者に対する心肺蘇生が記載されるようになりました。




“妊婦さんへの心肺蘇生”


妊婦さんであっても心肺蘇生は行い、AEDも使用します。(胎児にも影響なし)

妊婦さんは胎児がお腹を圧迫するので、下半身の血液が心臓に戻りにくいことから、なるべくお腹(胎児)を左側に避けながら胸骨圧迫を行う必要があります。




“心臓マッサージを行うときの衣服の取り扱い”



ガイドライン2015までは、心臓マッサージ(胸骨圧迫)を行う前に衣服を脱がすように記載されていました。


今回のガイドライン2020では、衣服を脱がすのが困難な場合は衣服の上から心臓マッサージ(胸骨圧迫)を行ってもよいと記載されています。


ただし、AEDのパッドは素肌に直接貼る必要があるため、衣服の上からパッドは貼れません。





“溺水者に対する心肺蘇生”


コロナ渦における心肺蘇生から、バッグマスクがない、もしくはバッグマスク換気ができない場合は、成人傷病者には人工呼吸はしない、というのが基本方針ですが、呼吸が原因で心停止が起こる可能性が高い子どもや溺水者に対しての心肺蘇生は人工呼吸が欠かせません。



ガイドライン       流れ
ガイドライン2020

呼吸の確認(顔は近づけず)→呼吸なし→気道確保→吹込み(補助呼吸)2回脈拍の確認1分間100回~120回のリズムで5センチ以上6センチ以下沈む力で30回+人工呼吸2回 AED

 

最初の吹込み2回には、酸素供給と人工呼吸で状態を改善できる事を期待して行う補助呼吸の意味合いを持っています。








最後に



ガイドライン2000ではAEDを市民レベルで推奨


ガイドライン2005は現在の30回胸骨圧迫して2回人工呼吸という手法が確立


ガイドライン2010は市民レベルでは意識のない人に対しては呼吸の有無をチェックすることなく胸骨圧迫を行う


そして現行のガイドライン2015は呼吸をしているかどうかわからない場合や心停止かどうかの判断に自信が持てない場合でも、心停止でなかった場合を恐れずに、ただちに心肺蘇生と AED の使用を開始することが強調されています。


このように、心肺蘇生ガイドラインは、時代にあわせ、最新の技術を取り入れ年々少しずつやり方が変わっていったり、より確実な方策が指摘されています。




今までのガイドラインでは、いかにシンプルに目の前の人を助けることが出来るかというところに焦点が当てられていましたが、今回のガイドライン2020では、妊婦さんや溺水者への心肺蘇生など具体的に記載されるようになり、目の前の大切な人を助けるということに焦点があてられるようになりました。


今回新たに発表されたガイドライン2020も、今後、各地で講習会などが開かれていきます。


消防署の救命講習や日本赤十字社の救急法などが溺水者への心肺蘇生などをどのように取り扱うかは未定ですが、ぜひ講習会などに積極的に参加し、目の前の大切な人を助けるのに役立ててほしいと思います。



講習会に関してはこちらの記事をご覧ください。

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