2020年9月24日宮崎市立江南小学校で心肺停止に陥った男児の命を先生6人の連携プレーが救いました。
救急隊に男児が引き継がれるまでの15分間の命のリレーを9分半のドキュメントにした動画を見ると、
先生6人の連係プレーは奇跡ではなく、日ごろからのしっかりした準備の賜物だということがわかります。
【ドキュメント動画】15分間の奇跡 先生の救命リレー:朝日新聞デジタル (asahi.com)を元に解説していきたいと思います。
目次
15分間の奇跡 先生たちの救命リレー
2020年9月24日、午後0時25分ごろ心臓に疾患を抱えていた男児生徒が、給食の食器を片付けている時に突然倒れ、心臓停止状態になってしまいました。
突然倒れた児童に、担任の別府先生が「大丈夫!?」と声をかけますが、児童の反応はなく、顔色も悪く、呼吸もゼイゼイハアハアしていたところから、緊急事態だと感じた先生は大声で助けを呼びました。
「誰か!」「田上先生AED」この声を聞いた先生たちが、119番通報、胸骨圧迫、AED等連携を取り、児童の意識が戻り救急隊に引き渡しました。
その間約15分間の救助劇です。
6人の先生それぞれの役割
6人の先生たちはどのような動きをとったのでしょうか?見ていきましょう
別府先生(6-3倒れた男児の担任)男児の意識を確認し、助けを呼ぶ
久木元先生(6-1担任)初めに駆け付ける
田上先生(特別支援クラス講師)以前心臓マッサージ経験あり
黒木先生(6-2担任)AEDを取りに行く
隈本先生(特別支援クラス講師)AEDを児童に貼る
吉瀬先生(養護教諭)4年前に赴任以来心肺蘇生のシミュレーション訓練を実施
先生 | 1回目電気ショック | 2回目解析 | |||||
別府先生 | 意識確認 横向きにする | 助けを呼ぶ | |||||
久木元先生 | 6-3へ 行く | 田上先生から携帯を受け取る | 救急隊へ連絡 | ||||
田上先生 | AED!の声で 119連絡 | 6-3へ行く 胸骨圧迫開始 | 電気ショック後胸骨圧迫 | 胸骨圧迫 再開 | |||
黒木先生 | 6-3 へ 行く | 1階へAEDを取りに行く | 隈本先生へ AEDを渡す | ||||
隈本先生 | 6-3へ行く | AEDを受け取る | AEDのパッドを貼る | AEDの操作 | |||
吉瀬先生 | パルスオキシメーターと血圧計を持ち6-3へ | 名前を呼び続ける | |||||
クラスメイト | 職員室へ連絡 | 静かに他の教室へ移動 |
2回目の解析「ショックの必要がありません」の後胸骨圧迫を再開すると、男児から一筋の涙がこぼれる。
その後、救急隊へ引継ぎ、男児は後遺症もなく元気に学校に通っています。
15分間の奇跡のポイント
担任の別府先生が「少しでも判断が遅れていたらこんな日常はなかった」と振り返る6人の連携にはいくつかのポイントがありました。
先生たちの行動のポイント
シミュレーションを行うことで、冷静に行動をとることが出来ます。
例えば、胸骨圧迫を行った田上先生は、サーフィンをしていた知人がおぼれて心肺停止になる状況に居合わせ、その際も心臓マッサージをしたという経験があったそうです。
冷静になることを心がけ、救急隊への連絡を久木元先生に任せて心臓マッサージに専念する判断ができたと語っています。
また、
・携帯を持って行った田上先生が先にいた久木元先生へ携帯を渡す。
・誰かの声で6-3へ向かった黒木先生は、田上先生が胸骨圧迫を行っているのを見て、自分は3階から1階にあるAED取りに行く。
・3階から1階にAEDを取りに行き、3階へAEDを届けに行って疲れているであろう黒木先生からAEDを受け取り、隈本先生がAEDを使った。
・クラスメートが職員室へ連絡した。
・クラスメートが6-3から他の教室へ移動した。
など様々なポイントがありました。
その中でも最大のポイントがあります。
最大のポイント
この連携の最大のポイントは、事前の訓練です。
4年前に養護教諭の吉瀬先生が赴任した際、男児が心臓に疾患を抱えているという引継ぎを受けていたそうです。
この引き継ぎを元に、学校で行われる心肺蘇生法の訓練では、ありきたりの訓練ではなく、心停止を起こしやすい児童がいるということを前提にシミュレーション訓練を行っていました。
シミュレーション訓練では、男児が授業中に心臓発作を起こしたという設定で、担任の別府先生が異変を知らせ、教員たちが一人一役で119番通報やAEDの操作、他の児童の誘導という内容となっていたそうです。
どういう風に連絡をしていくのか、どういう風なパターンの時にどういう風に動かなければいけないのか救命の連鎖を含めて準備をしてきたというのが最大のポイントであると減らせ突然死プロジェクト実行委員の本間医師も語っています。
15分間の奇跡を起こすための役割分担
宮崎市立江南小学校の先生たちのような連携には役割分担を把握しておくことが重要です。
人が倒れていたら、まず周りの安全を確認して、倒れている人に近づき全身を確認します。
傷病者の意識を確認して、意識が無ければ119番通報とAEDの要請をします。
呼吸を確認して、普段通りの呼吸が無ければ心臓マッサージをします。
AEDが到着したらAEDを持ってきてくれた人に心肺蘇生法を交代してもらいAEDを使います。
医師や救急車が到着するまでの間に、どんな対応ができたかが、病気やケガの経過に左右します。
しかし、助けている人とAEDを使用している人以外はどうしたらよいのでしょう?
119番通報してあれば、できることはもうないと考えてしまう方も多いのではないでしょうか?
実はAEDや119番通報以外にも、助けるために行えることがあります。
119番通報以外にもできること
ここでは3人集まったとして説明をします。
・Aさん(第一発見者もしくは最初に救助にあたった人)
・Bさん(AEDの依頼を受けた人)
・Cさん(119番通報の依頼を受けた人)
Aさん・・・
心肺蘇生法、止血等の手当
傷病者の観察、声かけ
脈や呼吸、顔色などの チェック
必要機材などの要請、指示
Bさん・・・
AEDのセット、心肺蘇生法を交代する
傷病者の観察、声かけ
脈、呼吸、顔色などのチェック
Cさん・・・
119番通報をしてからの状況メモ手当の補助毛布やパーティションを使用して傷病者を見せないようにするなど周りの人を落ち着かせる
二次事故の防止
生徒やお客さんなどを避難させる
救急隊の誘導
他にも
傷病者の保険証や診察券の準備
普段飲んでいる薬やお薬手帳の準備荷物の準備靴、上着などの準備
傷病者の個人情報の収集家族への連絡
他に責任者、管理者がいる場合の連絡
ご家族が到着していないときはいずれかの人が救急車に同乗することになります。
ざっとあげるだけでもこれだけあります。
また、手当をしている側は心身ともに疲れますので、手当を交代することでより確実に傷病者を助けることにつながります。
最後に
この出来事を受け、宮崎市立江南小学校では卒業を控えている6年生を対象に心肺蘇生法の知識を教える授業を予定しているそうです。
素晴らしい先生たちの勇気と日ごろからの準備で将来、人が倒れていても助けることが出来る人を育てるとても素晴らしい試みです。
ありきたりの訓練ではなく、心停止を起こしやすい児童がいるということを前提にシミュレーション訓練
心肺蘇生法の知識を教える授業
これらの働きが全国に広がることを願っています。
不惑の応急手当広め隊
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