出典 SLAM DUNK 新装再編版 8巻 井上雄彦/集英社
「いいから テーピングだ!」
このセリフは大人気バスケ漫画の『 スラムダンク 』の中で、 主人公桜木花道が所属する湘北高校のキャプテン赤木剛憲 (ゴリ)が放った台詞です。
神奈川県予選決勝リーグで、 海南大付属高校 との試合の最中、赤木は着地に失敗し足首をひねってしまいます。
マネージャー彩子はすぐに病院に行くべきだといいますが、全国出場をかけたこの試合を途中で退場することはできないと、赤木はテーピングで固めて再出場するために冒頭のセリフを口にします。
「いいから テーピングだ!」 この手当は正しいのでしょうか?
今回は、『SLAM DANK』を通してケガの応急処置であるPOLICE処置とは何かを徹底解説していきます。
目次
SLAM DANKとケガ
SLAM DANKには多くのケガのシーンが出てきます。
代表的なものだと、
前述の赤木の足首捻挫
湘北の三井寿がグレるきっかけになった、膝のけが(おそらく外側半月板損傷)
三井の膝のケガの再発
主人公桜木花道が山王戦でルーズボールを追いかけ机に背中を強(脊椎分離症?)

他のスポーツでもサッカーの捻挫、ランニング中の肉離れ、テニスのテニス肘など運動特有の症状が発生します。
スポーツによって起こるケガにはスポーツ外傷とスポーツ障害に分けることができます。
スポーツ外傷
スポーツ外傷とは、一度の衝撃で瞬間的に大きな力が加わって起きる急性のケガをいいます。
急激な痛みや腫れ、炎症などを起こします。
代表的なものとして、骨折・打撲・捻挫などがあります。

スポーツ障害
スポーツによって起こるケガの二つ目はスポーツ障害です。
スポーツ障害とは、日々のトレーニングにより特定の部位に繰り返し負担がかかって炎症を起こし、痛みが生ずる慢性の怪我のことです。
代表的なものとして、水泳肩・野球肘・テニス肘・疲労骨折などがあります。
いいから テーピングだ! は正しいのか?
スポーツ外傷を負った赤木が言った 「いいから テーピングだ!」 この手当は正しいかったのでしょうか?
痛みや腫れ、内出血をこれ以上起こさせないように応急措置をする必要があります。
そのためには、テーピングで固定することも大事ですが、それよりも優先すべきことがあります。
それが、Protection(保護)Optimal Loading(適切な負荷)Ice(冷却)Compression(圧迫)Elevation(挙上)の頭文字をとったPOLICE処置です。
いいから 保護をして、ある程度負荷をかけろ
従来は、怪我をした際、まず最初にすべきことは患部の安静(Rest)でしたが、負傷した部分をまったく使わない状態が続くと、怪我からの回復が遅くなってしまうことがあります。
たとえば、足首の捻挫の場合、足首の安静を保ちすぎると患部のむくみが進行していき完治に時間を要することがあります。
そのため、患部を保護しながら少しずつ負荷をかけることで、怪我からの早期回復が期待できる処置が Protection(保護)Optimal Loading(適切な負荷) です。
次は アイシングだ!
安静な状態から次に行うことがIcing(冷却)、つまり、幹部を局所的に冷やすことです。
アイシングには3つの目的があります。
冷やすことによって「血管の収縮」につながり、結果的に血は止まりやすくなります。
出血をなるべく早く止めることで、細胞壊死と腫れを抑えることなど「二次的障害の予防」をします。
冷やすことで痛みを感じる感覚神経が麻痺を起こすことによる「痛みの軽減」です。
アイシングのやり方は、ビニール袋やアイスバックに氷をいれて患部を冷やします。
15分くらい冷却したら(患部の感覚がなくなったら)はずし、また痛みがでてきたら冷やす。
これを繰り返しましょう。
続いて 患部の圧迫だ!
RICE処置の3つ目はCompression(圧迫)です。
患部を圧迫することで、内出血や腫れを抑えることが目的です。
圧迫の方法は、包帯、テーピング、スポンジ、テーピングパッドなどを組み合わせて患部に適度な圧力をかけていきましょう。
応急処置として行った他とは必ず医療機関で適切な処置を受けるようにしてください。
最後は 心臓より高く足を挙げろ!
最後は、患部を心臓より高い位置に挙げる、Elevation(挙上)です。
Elevation(挙上)の目的は、
「心臓よりも高い位置に置くことによって血液が心臓に戻りやすくなるため」
「血液や組織液が吸収されやすい、手や足に血液がたまらないようにするため」
の二つです。
長時間続けられるよう、台やクッションなどを使って工夫しましょう。
最後に
今回は『SLAM DANK』を通してケガの応急処置の基本である、POLICE処置をご紹介しました。
従来はRICE処置がケガの応急処置の基本でしたが、今ではRestから、 患部を保護しながら少しずつ負荷をかけることで、怪我からの早期回復が期待できる処置が
Protection(保護)Optimal Loading(適切な負荷) に変わっています。
けが人や急病人が発生した場合、居合わせた人が手当を正しく速やかに行うことで、傷病者の救命効果が向上し、傷病治療の経過にも良い影響を与えます。
緊急性が高いと判断したときは、迷わず救急車を要請してください。
いざ、緊急の事態に遭遇した場合、適切な手当を実施するには日頃から手当に関する知識、技術を身につけておくことが大切です。
当サイトではこれまでも
大ヒット漫画・アニメを通して
いざ、緊急の事態に遭遇した場合、適切な手当を実施するには日頃から手当に関する知識、技術をご紹介してきましたので、あわせてご覧ください。
第1弾 『鬼滅の刃』から学ぶ 傷(キズ)処置の手順について
第2弾 『はたらく細胞』から学ぶ 心停止になった時心臓マッサージやAEDを使う時私たちの体の中で何が起きているのか?
第3弾 『名探偵コナン』から学ぶ 衰弱している人・意識がはっきりしていない人への応急手当
第4弾 『ワンピース』から学ぶ 応急手当の目的
第5弾 『週刊少年ジャンプ』の人気漫画から学ぶ鼻血の間違った止め方


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